まわりにまわる

わたしの女子校時代の友人が
目白でお店を開いていて
その隣の喫茶店とはその縁で通う様になり
仕事帰りに通う池袋の喫茶店のマスターによれば
うちのお客さんはそこと掛け持ちが多い
、らしく
池袋の喫茶店のバイトくんが目白住まいなので
隣の喫茶店を紹介したところお気に召した様で
たまに通ってる話をそこの息子さんから聞いて
池袋のマスターは1人で切り盛りをしているけれど
お昼は妹さんが手伝いに来ていて
(わたしの行く時間とは違うのであったことはない)
妹さんのお住まいが東久留米で
東久留米と言えば
目白の友人の実家があるところで
わたしも学生の時は随分お邪魔したし
友人のお母さんも駅前にお店を開いている場所で
なんだか世間は狭いのか
めまぐるしいのやら
繋がっているようで繋がっていない
変なせかいだなぁ
と、大袈裟に思いましたとさ。

五番ホームと二番ホームの間

池袋の改札まで一緒

僕は五番ホームで

君は二番ホーム

電光掲示板を見ながら

終電は、まだまだ先だし

どうしようかな

て、お互い探り合いをしていると

君は決まって

ねぇ、家においでよ

て、言う

僕はそれを待っていて

じゃあ、終電まで

て、答える

それまでは、あくまで真っ直ぐ帰りますよ

て、素振りでお互い過ごしているのに

ね。


そういうやりとりも好きだったよ

わたしは忘れないで

忘れて 忘れて 忘れて下さい

わたしのことはどんどん忘れて下さい

お願いです

わたしは君のことを忘れないで下さい

君の細部まで忘れないで下さい

君と過ごした日々を全て忘れないで下さい

お願いです

五月の終わりと六月の始め

池袋から目白に歩くのは好きで
その間に住んでいるから
その子のことも好きになったんだと思う。

六つ下の友人
(これからゆっくり仲良くなれそうな)
が、出来た。
出来た、ていう表現は
いつも違和感を感じる。

僕たちはまだ出来ていないのかな。

これが所謂、
ドキドキする
とかそういう恋の予感なんてものは
ちっともない。

気軽にご飯を食べたり
本を読んだり、遊びに行けたり
そういう事が出来る人だと思う。

僕にとって
とても嬉しいこと。

仲が良い気が合う友人になれそうな予感。

だから、
台無しにするようなことをしたくない。
そういう関係になったら
きっと僕は意地悪をする。
みっともないことをする。
何かを試して確かめるなんて
あまり良くない方法で満足を得ようとする。

でも、
どこかで台無しになってしまえば良いな
なんて思っているよ。

こんな時、君だったらどうするのかな。
なんて、言うのかな。
判らないや。
僕は君じゃないもの。

でもね、ひとつだけ判るよ。
君は僕の味方だったから
今、君が生きていても
きっと何かしら僕の為を思って言ってくれる。
それを、僕は悪く利用して
君を試して確かめるのかな。
それは、嫌だね。

やっぱり、僕は君が好きだよ。
君が一番の友人で
これからもそうであるのは変わりないかな。


少しだけ泣く。

わたしはいつも彼が死ぬことを考えていた

わたしたちの関係はとても気楽で危うかった

わたしは交際をしていた人がいて
その人と結婚をする約束もしていた

だから彼と真剣に向かい合うこともなく
当時の交際していた人と合わない趣味が
彼とはするりと合い
時間を持て余したり
誰かと食事したい時は
真っ先に彼を呼ぶことがいつしか当たり前になっていた

一緒に朝を迎えたり
戯れにやきもちを妬いたり

そんな、適当で安心な日々が少しでも長く続くと良いな
なんて呑気に甘えていた

彼がわたしの働いていた病院で
末期癌だと判り
緊急手術をして
余命宣告される前に
わたしたちはきちんと付き合うことになった

毎晩、毎晩
おれは本当は何の病気なの?
て、聞かれる度に
腸閉塞だよ
と答えた

(実際に腸閉塞もあったので嘘ではない)

ある日、震えながら
おれは手術で身体障害者になった
と、目を合わさずに伝えられた

(わたしは病院で働いているし)
(彼の状態については彼より知っている)

心の中では
お前の身体はもっと大変なことになってるんだよ
て、ツッコミながら
うん、うん、頷きながら聞いていたけど
彼が震えていることにビックリした

彼が余命宣告を受け
表面上は至って普通だっけれど
わたしは大袈裟に心配をしていた

毎日、お見舞いに行き
(皆勤賞だね、て言われた)
一緒にゆっくり散歩し
階段を歩く時は、じゃんけんをしながら歩いた
彼はじゃんけんが弱くて
わたしがパーやチョキで連勝すると
直ぐに姿が見えなくなった
本当にじゃんけんが弱かった

ゲームもした
マリオカートは最終的に
わたしがはまってしまい圧勝だった

入院中にスラムダンクを貸し
(彼の世代なら読んでいるのは当たり前だと思っていたら)
(暴力シーンが苦手な為、読んでないとのこと)
最初は嫌かもしれないけど
少しずつ不良シーン減るから読んでみて
と説得して読み終わったあとに
どのシーンが良かったか、
どのキャラが好きか、を言い合ったら
彼は意外にもゴリが好きだと答えた
ミッチーのシーンは?泣いた?
て、聞いたら
あんまり…
とのことで
ゴリが周りに理解されず
それでも真面目にバスケを続ける姿に泣いた
と、言われ わたしはビックリして笑ってしまった

そんな彼が好きだな
て、今でも思う